技術士と弁理士はどう連携できる?―交流会を企画して考えた「技術の価値」
2026年9月5日、日本技術士会 青年技術士支援委員会で、「技術士・弁理士交流会 ~技術をどう守り、価値に変え、社会実装するか~」を開催しました。
私は今回、企画担当として、弁理士側との調整や企画内容の検討、当日に向けた準備などに携わりました。
技術士と弁理士は、どちらも「技術」に深く関わる専門職です。一方で、普段の仕事では、互いの考え方や仕事の進め方について直接話す機会は、それほど多くないように思います。
そこで今回の交流会では、互いの仕事を知るだけでなく、「技術を、それぞれの専門家はどのような視点から見ているのか」を考えられる場にしたいと考えました。
当日の詳しい内容については、青年技術士支援委員会の開催報告で紹介されています。本記事では少し視点を変えて、企画や当日の交流を通じて私自身が考えたことを振り返ってみます。

同じ「技術」でも、見る角度が違う
交流会の前半では、技術士2名、弁理士2名から、それぞれの実務や専門性を踏まえて講演いただきました。
石川寛匡氏からは、原子力・放射線分野を題材として、「制度・規制」「現場」「社会」をつなぐ技術士の役割について紹介いただきました。
技術的な課題を解決するだけではなく、技術的根拠に基づいて判断を支え、社会への説明や現場での運用につなげていく。技術を社会の中で機能させるうえで、技術士が担う役割について考える内容でした。
森祐真氏からは、インフラの老朽化や技術者不足を背景としたインフラDXと、それを支える計測技術について紹介いただきました。
サンプリングモアレ、光ファイバーセンサ、長距離無線、クラウドなど、さまざまな技術を組み合わせながらインフラの状態を把握し、維持管理や予防保全につなげていく取り組みです。
一方、弁理士の中尾直樹氏からは、特許制度の基本的な考え方とともに、「価値の高い技術」と「価値の高い特許権」は必ずしも同じではないという視点が示されました。
技術として高度であるかだけではなく、技術的特徴と効果の関係を整理し、それをどのように発明として捉え、権利化するのか。技術者とは少し異なる角度から技術を見る考え方が印象に残りました。
佐野浩太郎氏からは、重要な特許を、技術面だけでなく、市場規模、競合状況、事業との関係なども含めて評価する考え方について紹介いただきました。
さらに、特許情報と市場・事業情報などを組み合わせて分析し、戦略策定につなげるIPランドスケープについても解説いただきました。
4つの講演はそれぞれ異なるテーマでしたが、並べて聞いてみると、一つの「技術」にも、さまざまな見方があることが改めて見えてきます。
「良い技術」だけでは、社会実装まで完結しない
技術者として仕事をしていると、「技術的に優れているか」「要求性能を満たしているか」「課題を解決できるか」といった点に、どうしても意識が向きます。
もちろん、技術そのものを成立させることは重要です。
一方で、その技術が実際に社会で使われ、価値を生み出すまでには、技術以外にもさまざまな要素が関係します。
制度や規制、安全性、現場での運用、知的財産、市場、競合、事業性――。
今回の4つの講演を通じて考えてみると、「技術の価値」は技術的な性能だけで決まるものではなく、どのように守り、使い、社会や事業につなげていくかによっても変わってくるように思います。
今回の交流会で掲げた、
「技術をどう守り、価値に変え、社会実装するか」
というテーマは、講演を通して改めて考えることになりました。
他士業との交流を「自分の仕事」に引き寄せて考える
後半では、技術士と弁理士の混成グループでディスカッションを行いました。
今回、企画を考えるうえで意識したことの一つが、講演を聞いて「勉強になった」で終わらせないことでした。
まずは自身の業務や専門分野、講演内容との接点、相手専門職に聞いてみたいことなどを起点として話し、
「技術と知財は、実務のどこで接続するのか」
「技術士と弁理士が連携すると、どのようなことができるのか」
「今後、どのような交流や連携が考えられるのか」
といったテーマへ議論を広げていきました。
私自身も当日の議論を聞きながら、他士業との交流では、単に「相手がどのような仕事をしているか」を知るだけでなく、「自分の仕事のどこに、相手の専門性との接点があるだろうか」と考えてみることが大切なのではないかと感じました。
そう考えると、他士業との交流は人脈づくりだけではなく、自分自身の仕事や専門性を別の角度から見直す機会にもなります。
初回の交流から、もう少し深い議論へ
参加者アンケートでは、知財や弁理士の考え方への理解が深まったことや、普段接点の少ない相手専門職と直接話せたことを評価する声が寄せられました。
弁理士側からも、技術士の仕事や社会実装に対する考え方への理解が深まったという声がありました。
その一方で、
「次回はテーマを絞って、より深く議論したい」
「具体的な課題を設定して議論してみたい」
といった意見もありました。
今回は青年技術士支援委員会 − 統括本部では初めての士業交流企画ということもあり、まずは互いの専門性を知り、その接点を広く考えることを重視しました。
そこからもう一歩進めて、例えば一つの技術テーマや社会課題を設定し、技術士と弁理士がそれぞれの立場から同じ問題を考えてみるのも面白そうです。
実際の技術課題を前にしたとき、技術士は何を見るのか。弁理士は何を見るのか。そして、両者の視点を組み合わせると何が見えてくるのか。
今回の交流を通じて、そんな次の展開も考えられるように感じました。
技術を見る「視点」を増やす
今回、企画から当日の交流まで関わってみて、私自身が特に興味深く感じたのは、専門性が異なると、同じ技術を見ても着目するところが変わるということでした。
技術そのものを見る。
現場でどう使われるかを見る。
社会の中でどう成立させるかを見る。
知的財産としてどう守るかを見る。
市場や事業の中でどのような意味を持つかを見る。
どれか一つだけが正しいというものではなく、それぞれ異なる視点です。
技術士はそれぞれの専門分野を持つ技術者ですが、その技術を実際に社会で生かそうとすると、自分の専門領域だけでは完結しない場面が少なくありません。
だからこそ、自分とは異なる専門性を持つ人と話し、技術を見るための「視点」を少しずつ増やしていくことにも意味があるのだと思います。
今回の技術士・弁理士交流会は、私自身にとっても、そのことを改めて考える機会となりました。
今後も、こうした分野や専門性を越えた交流から得られた気づきについて、このブログでも時折紹介していきたいと思います。
イベント当日の講演やグループディスカッションの様子については、青年技術士支援委員会の開催報告もぜひご覧ください。
− 執筆者 −
鳥形 啓輔
技術士(金属部門)。製造業にて、材料・溶接分野の研究開発を経て、現在は知的財産部門で特許情報分析や技術・知財動向の調査に従事しています。日本技術士会 青年技術士支援委員会では、若手技術者向けのCPD行事や交流企画の企画・運営に携わっています。本ブログでは、金属材料・溶接、設備保全、技術と知財などを中心に、技術者の実務に役立つ情報を発信しています。。
→ [技術士事務所トリテクノサービスについて]
