キャリア戦略としての「技術士」—変化の時代を生き抜く武器

なぜ、今こそ技術士を目指すべきなのでしょうか?
実は今、日本社会では働き方やキャリアのあり方が大きく変化しています。
かつての「終身雇用」制度は、もはや多くの企業で成り立たなくなり、ジョブ型雇用が増加しています。企業は従業員に対して一生の雇用を約束することが難しくなり、従業員は転職や兼業といった選択肢を視野に入れることが一般的になってきました。こうした背景を踏まえると、「一社からの収入に依存するリスク」はこれまで以上に深刻だと言えるでしょう。
技術者として、これからの時代を生き抜くためには、ただ一つの企業に依存するのではなく、自分の専門性やスキルを証明できる資格を持っていることが重要です。そこで注目したいのが「技術士資格」です。これは、自身の専門性を社会的に証明し、将来のキャリアにおける強力な武器となります。
技術士資格のここがすごい
「技術士」は、日本の技術者にとって最も権威のある国家資格の一つです。
この資格を持つことは、単に自分の専門分野に対する深い知識や技術を証明するだけではありません。それ以上に、自分のキャリアを強固にし、さまざまな働き方に対応できる柔軟性を手に入れることができます。
- 専門性の証明
技術士資格を持つことにより、その技術分野における専門家としての認知を得ることができます。例えば、金属部門の技術士の場合、材料の選定や溶接、熱処理技術など、業界で求められる高度な技術や知識に対する信頼性が高まります。 - 転職・昇進に有利
転職や昇進の際、技術士の資格は他の候補者と差別化できる大きなポイントです。専門性を証明する資格として、企業内での昇進や転職先での評価にも大きな影響を与えます。→ たとえば、あなたが企業のキャリア採用担当者だったとしましょう。技術士資格の有無を除けば同じのスキル・経歴の2人が候補にいた場合、果たしてどちらを選ぶでしょうか? - 独立・兼業の道を開く
技術士資格は、将来的に独立したり、フリーランスとして働いたりする際の強力な後ろ盾となります。また、兼業や副業の普及が進む中で、専門性を活かした別の事業にチャレンジする際にも、この資格が一つの信頼の証となります。
変化の激しい社会において技術士資格が求められる理由
終身雇用制度の崩壊やジョブ型雇用の広がりに伴い、労働市場はより流動的になっています。これまでのように、一社に勤め続けることが必ずしも安心できる時代ではなくなっています。企業が求めるのは、専門的なスキルを持ち、自らのキャリアを自立的に築いていける人材です。
このような環境で、技術士資格を取得することは、次のようなメリットをもたらします。
- 社会的信頼を得る
技術士は、技術者としての社会的責任を果たすことが求められる資格です。国家資格であり、厳しい試験を通じて得られるものなので、技術士資格を持つことは、他者からの信頼を集める要因になります。 - キャリアの幅を広げる
技術士資格を持つことで、技術的な深い知識だけでなく、技術に関するマネジメントやプロジェクトマネジメントの能力を有することも証明されます。これにより、企業内での役割の幅も広がり、独立や新たなキャリアへの挑戦も可能になります。
私自身の経験と技術士試験への挑戦
実を言うと、私自身も技術士資格(金属部門)を取得するまでは、キャリアの方向性に迷いを感じていました。しかし、技術士資格を目指す決意を固め、試験に挑戦したことで、自分自身の専門性に対する自信が深まり、職場での信頼も大きく向上しました。技術士資格を取得した後は、継続研鑽への取り組みや、職場において技術士コンピテンシーを発揮することに対する意識が高まりました。その結果、自分の意見により多くの関係者が耳を傾けてくれるようになり、また意見に共感し一緒に挑戦する仲間が見つかったことは、大きな変化でした。
もちろん、試験勉強は決して楽なものではありませんでした。特に論文試験では、何度も手を止めてしまったこともありました。しかし、その過程を経て身につけた技術的な知識や思考力は、今でも私の仕事に活かされています。
よくある不安とその対策
とはいえ、技術士試験に挑戦する際、多くの肩が不安を感じるのも自然なことです。特に、試験にかける時間や、自分が合格できるのかどうかについて不安を感じる方も多いでしょう。
- 「忙しくて勉強時間が取れない!」
仕事に加え、家事や育児など、忙しい日常の中で勉強時間を確保するのは簡単なことではありません。しかし、スキマ時間をうまく活用したり、効率的に学べるオンライン教材を利用したりすることで、負担を減らすことができます。 - 「論文が書ける気がしない!」
論文は初めて書くときにハードルが高く感じるかもしれません。しかし、合格する論文の構成について理解し、添削を受けることや、過去問題を解くことで実力つきます。仲間と情報交換をするのも大きな助けになります。 - 「自分には無理」
多くの合格者は最初から順調だったわけではありません。どんな背景の人でも、努力と工夫で乗り越えられるものです。自分のペースで、一歩ずつ進んでいきましょう。
技術士資格を目指す方へのメッセージ
技術士資格は、単なる試験の合格ではなく、自分の専門性をさらに深め、広げるための大きな一歩です。
終身雇用制度が崩壊し、ジョブ型雇用が主流となる中で、この資格を手に入れることは、将来に対する強力な備えとなります。ニッチな技術分野の技術者が、技術士として更に信頼され、社会に貢献するためには、この資格が非常に大きな意味を持ちます。皆さんがこの道に挑戦することで、さらに強いキャリアを築くことができると信じています。
技術士資格は、専門性の証明にとどまらず、より広い技術者ネットワークへのコミュニティとの「入場チケット」となります。そしてそのチケットを入手したとき、あなたのキャリアは次のステージへと踏み出すことができるでしょう。技術士の責務の一つである、「資質向上の責務」を果たしていく中で、そのモチベーションの維持に欠かせないのが、同じ志を持つ技術者との交流です。
そうした志を同じくする仲間と出会い、互いに高め合える場として、私は「日本技術士会 金属部会 若手技術者の会(YES-Metals!)」を強くおすすめします。YES-Metals!では、技術士を目指す方々や、すでに技術士として活躍する方々が集い、知識を共有し、互いに成長し合うための貴重な場です。毎月第3土曜日に開催される会合では、以下のような充実したプログラムが用意されています。
- 講演会
技術士活動、業務紹介、技術講演、技術士試験受験体験談など、実際に技術士として活躍している方々の経験や知見を学ぶことができます。 - 座談会
金属技術の最新動向や、技術士試験に関する相談、近況報告など、参加者同士で意見を交換し合いながら、専門的な議論を深めることができます。 - 技術士試験ワーキンググループ
複数のグループに分かれて開催している上記「座談会」における一グループです。技術士試験受験者と合格者が参加する相互研鑽のグループです。受験にあたっての悩み、疑問点、注意点などを共有することで受験に備えられます。また、申込書や論文の書き方を相互にシェアして改善に取り組むこともできます。金属部門以外の技術部門でも自由にも参加できます。
YES-Metals!の会合の参加費は無料で、技術士としての未来を切り開くための出会いや気づき、刺激を得ることができます。技術士を目指している方、またはすでに技術士として活躍している方々と共に、科学技術の向上や国民経済の発展に貢献するために、一緒に成長していきましょう。
ご参加をお待ちしています!
参加希望の方は、下記の連絡先までご連絡ください。
連絡先: yesmetals★gmail.com (★を@に置換してください。)
YES-Metals!フェイスブック:https://www.facebook.com/profile.php?id=100057714780419
最後に ~あなたはすでに「挑戦する少数派」です~
日本では、就業者全体の56.1%が「業務外の学習時間無し」という調査結果があります(※1)。社会人になると日々の業務や家庭のことで忙しく、意識的に学びの時間を確保する人は決して多くありません。
そんな中で、「技術士試験に挑戦しよう」と考え、このブログ記事を読んでいるあなたは、すでに他の多くの人とは異なる道を歩んでいます。これは、単なる資格取得以上に、自分のキャリアと真剣に向き合おうとしている証です。
不安を感じるのは当然のことです。しかし、あなたはすでに一歩を踏み出しており、学び続ける意思を持った希少で価値ある存在です。どうかその事実に自信を持って、次の一歩を進んでください。あなたの挑戦を心から応援しています。