技術士試験攻略:夏のビーチ・ボディから学ぶ「問題」と「課題」の見極め方

1. はじめに

1.1 本記事の目的と対象とする読者

技術士二次試験の論文問題対策に取り組む技術者の皆さん、こんにちは。

この記事は、皆さんが論文問題で行き詰まったときの“道しるべ”となることを目的としています。特に、論文構成を検討する上で基礎となる「問題」と「課題」を正しく導き出す手順について、シンプルな例を通して理解していただくことを目指しています。

技術士二次試験は、高度な専門知識と実践的な問題解決能力が求められる厳しい試験です。その中でも、論文問題は特に多くの受験者にとって大きな壁となっています。論文をうまく書くためには、「問題」と「課題」を正確に区別し、それぞれに適切な解決策を見出す能力が求められます。しかし、この「問題」と「課題」の違いを正しく理解し、論文に反映させることは容易なことではありません。

そこで本記事では、技術の話題から少し離れて、身近でシンプルな例を用いることで、「問題」と「課題」を明確に区別する方法を解説します。具体的には、「夏のビーチで輝く健康的な体づくり」をテーマに、現状(As Is)あるべき姿(To Be)の分析を行い、現状と理想との間に存在するギャップを「問題」として特定し、それに対する「課題」を設定する手順を示します。このシンプルな例を通じて、論文問題に取り組む際に必要な思考プロセスを身につけ、試験に臨む自信を深めていただければ幸いです。

技術士試験の攻略を目指し、一緒に学んでいきましょう。

日々を充実して生きるには,健康的な肉体が不可欠です

1.2 「問題」と「課題」の理解がなぜ重要か

技術士二次試験の論文問題対策において、「問題」と「課題」の理解は極めて重要です。実際に多くの受験者が過去問を用いた練習に取り組む中で、添削をしてもらった講師から「解答案のこの記載は、問題を記載するべきところなのに課題を書いている」「問題と課題の内容が対応していない」といった指摘を受ける経験があります。

「問題」と「課題」を正しく導けていない場合、論文の構成が定まらず、その結果として解答の主旨がブレたり、論理が破綻した解答を作成してしまうことがあります。例えば、問題として提示すべき部分に課題を書いてしまうと、読者や採点者は何が本当の問題であり、それに対する解決策がどうなっているのかが分かりにくくなります。こうした曖昧さや混乱は、出題者の意図に正しく答えた解答論文を作成することを妨げます

技術士試験の論文問題は、単に知識を問うものではなく、問題解決能力や論理的思考力を評価するものです。そのため、問題を明確にし、そして課題を適切に設定するスキルは、論文問題対策の重要な要素となります。これらのスキルを身につけることで、論文の構成が整い、主旨が一貫した解答を作成することができるようになります。

本記事では、シンプルな例を用いて「問題」と「課題」の違いを明確にし、それぞれを正しく導く手順を解説します。このスキルを身につけることで、技術士二次試験の論文問題に対する理解が深まり、試験対策の一助となることを目指しています。技術士試験攻略の鍵となる「問題」と「課題」の理解を、この記事を通じてしっかりと身につけていきましょう。

1.3 身近なシンプルな例を使う理由

技術士試験は、20の部門と69の選択科目から構成されており、それぞれの科目は高度な専門的知識を必要とします。そのため、「問題」と「課題」を正しく導くスキルを専門的な例題を通じて学ぶのは、非常に非効率であると考えます。

まずは身近にあるシンプルな例をテーマにして、「問題」と「課題」を導くフローを経験することが重要です。シンプルな例を通じて基本をしっかりと抑えることで、その後に自らの専門分野に応用することが容易になります。これは、スキル習得の近道であると確信しています。

「問題」と「課題」は、特に緊張する本番の試験において混同しやすいものです。シンプルな例で基本的な理解を深めておくことで、試験の際にも冷静に論文構成を検討し、誤りがないかを確認することができると期待されます。これにより、論理的で一貫性のある解答を作成する力を養うことができます。

具体的には、「夏のビーチで輝く健康的な体づくり」という身近でわかりやすいテーマを用います。このテーマを通じて、現状とあるべき姿のギャップを「問題」として特定し、それに対する具体的な「課題」を設定する方法を学びます。このプロセスを経験することで、技術士試験の論文問題においても同様の手法を効果的に適用できるようになるでしょう。 シンプルな例を使うことで、基礎的な理解を固め、本番の試験においても冷静で論理的な思考を保つ力を身につけましょう。これが、技術士試験の成功への第一歩となります。

2. 現状(As Is)とあるべき姿(To Be)とは?

2.1 「現状」と「あるべき姿」の定義

技術士試験の論文問題において、「現状(As Is)」と「あるべき姿(To Be)」を考えることは非常に重要です。これは、問題を分析し、課題を設定するための「As Is To Beフレームワーク」というアプローチに基づいています。このフレームワークは、ビジネスやプロジェクト管理の分野で広く普及しており、その歴史は数十年にわたります。

As Is To Beフレームワークは、1970年代から1980年代にかけて、企業の業務改善やプロセス最適化のための手法として発展した歴史があります。その後、IT業界や製造業、サービス業など多くの分野で応用され、現在ではプロジェクト管理やシステム開発、品質管理など、さまざまな領域で活用されています。このフレームワークは、現状と理想の状態を明確にし、その差分を問題として特定し、解決策を導き出すための強力なツールです。

では、「現状(As Is)」と「あるべき姿(To Be)」とは何かを解説します。

現状(As Is)
現状とは、現在の状態や状況のことを指します。これは、客観的なデータや事実に基づいて記述されるべきものであり、現時点での問題や課題を明確にするための出発点となります。技術士試験の論文問題においては、現在の技術的な問題点や課題、現場の状況などを詳細に記述することが求められます。

あるべき姿(To Be)
あるべき姿とは、理想的な状態や目標となる状態のことを指します。これは、達成すべき目標や改善後の状態を具体的に描くものであり、未来のビジョンを示すものです。技術士試験の論文問題においては、どのような技術的解決策が最適であり、それによってどのような成果が得られるのかを明確に記述することが求められます。

「問題」とは、現状(As Is)とあるべき姿(To Be)の間に存在するギャップや差分のことです。これは、現状から理想の状態に到達するために克服すべき障害を示しています。そして、「課題」とは、この問題を解決するために具体的にすべきことを指します。課題は、実行可能で現実的な行動計画につながるものを設定するべきです。

As Is To Beフレームワークを活用することで、現状の問題点を明確にし、理想の状態に向けた具体的な解決策を導き出すことが可能となります。技術士試験の論文問題においても、このアプローチを用いることで、論理的で一貫性のある解答を作成することができるでしょう

2.2 技術士試験における具体的な例と関連付け

技術士試験の二次試験の筆記試験においては、必須科目Ⅰおよび選択科目Ⅲにおいて、As Is To Beフレームワークを適用した問題分析と課題設定が求められます。このフレームワークを活用することで、受験者は論理的で明快な解答論文を作成する基盤を築くことができます。

具体例として、令和5年度の金属部門の必須科目1-1があります。この問題では、「輸入に依存する鉱物資源の有効活用の推進と資源制約の軽減」がテーマとなっており,問題分析を行い,課題を設定し,解決策を述べることが求められています。

技術士試験では、問題文において、あるべき姿の一端が示されている場合が多くあります。これは、現在、日本政府や国際社会が共通して取り組んでいる最先端のテーマに関連した出題が多いためです。しかし、問題文に示される「あるべき姿」は高い視座から述べられたものであり、受験者は自らの専門分野における具体的なあるべき姿を考える必要があります。

また、「現状(As Is)」についても同様に、受験者は自らの専門分野や所属機関での具体的な現状を踏まえて考える必要があります。現在の技術的な課題や問題点を客観的に把握し、その上で理想的な状態(To Be)に向けた具体的な改善策を設計することが試験の要求事項です。

技術士試験の論文問題においては、このように具体例を用いて問題解決の過程を明確に示すことが重要です。受験者は、抽象的な問題文を具体的な技術的課題と解決策に落とし込む能力を磨くことで、高い評価を得ることができるでしょう。

3. シンプルな例:夏のビーチで輝く健康的な体づくり

3.1 例の設定と背景説明

夏のビーチで輝く健康的な体づくりをテーマに考えてみましょう。この例では、あなたは年度はじめに受診した定期健康診断で「肥満症」と診断されました。ベルトの上には贅肉が乗っており、外見的にも気になっています。長らく運動習慣がなく、筋力も低下しています。職場の保健師からは肥満解消を勧められ今夏はパートナーや子供、友人たちとビーチに行く予定があります。そのため、夏のビーチで輝く健康的な体を目指すために取り組むことを決意しました。

この背景を踏まえて、どのようにして健康的な体づくりに取り組むか、具体的なステップを考えていきましょう。

3.2 このテーマが技術士試験の対策にどう役立つか

夏のビーチで輝く健康的な体づくりを例に挙げることで、技術士試験の対策にどう役立つのでしょうか。この例を通して、問題分析と課題設定のスキルを磨くことができます。この例では、肥満症という現実に対して、その原因や具体的な現状を分析し、「あるべき姿」として健康的な体を目指すために必要な課題を設定していくことになります。技術士試験でも同様に、与えられた問題文を深く理解し、問題と課題を正しく把握することが解答の鍵となります。

身近でシンプルな例を通じて問題と課題の違いを明確に理解することで、技術士試験などの複雑な問題設定にも対応しやすくなります。例えば、問題文に示された「あるべき姿」を適切に捉え、現状との差異を明確に分析することが、論文の構成や解答の質を向上させる鍵となります。このように、シンプルな例を通じて基本的な概念を再確認し、技術士試験の難問に臨む準備を整えることができます。

ここでお断りですが、このテーマを通じて提案する肥満症の解決策やそのための方法論は,あくまで問題分析と課題設定のスキルを学習のために示した一例であり、現実世界においては、医師や専門のトレーナーの助言を参考にしてください。

4. 現状(As Is)の分析

4.1 自分の現状の詳細な分析

自身の現状(as is)を詳細に分析することは、健康的な体づくりの第一歩です。ここでは、主観的な感触と客観的な数値を組み合わせて、現在の状況を明確に把握しましょう。

主観的な現状の例:

  • ベルトの上に乗った贅肉が目立つ
  • 筋肉量が少なく、体力が低下している感じがする
  • 服のサイズが合わず、着こなしが難しい
  • 猫背がちで、姿勢が良くない

これらの主観的な観点から自分の体の状態を振り返ることで、身体的な課題や改善すべき点を具体的に捉えることができます。

客観的な現状の例:

  • ウエスト:85cm
  • BMI:28(肥満区分)
  • 体脂肪率:30%
  • 筋肉量:50kg
  • 体内年齢:実年齢+10歳

客観的な数値を把握することで、具体的な健康状態を客観的に理解することができます。これらの数値は、健康診断や体組成分析などで測定し、自分の体の現状を客観的に評価する際に役立ちます。

現状の分析では、項目が多い場合には、それぞれを適切に箇条書きにして整理し、主観的か客観的かによってグループ分けすることで、分析をより効果的に進めることができます。この段階で明確に現状を把握することで、次のステップである「あるべき姿」を設定し、具体的な課題とその解決策を考える準備が整います。

テーマが抽象的過ぎて現状(as is)を捉えづらい場合の考慮:
テーマが抽象的で具体的な現状を捉えづらい場合は、まず主観的な視点から現状を挙げていきます。たとえば、自分の外見や感覚的な体の状態から始めることで、具体的な数字や客観的な指標に言語化するプロセスが有効です。主観的な分析を基にして客観的な数値を求め、それを通じて状態を理解することで、現状(as is)をより詳細に把握し、具体的な改善計画を立てることが可能になります。

4.2 「肥満症」を例とした現状(as is)分析の具体的なポイント

現状(as is)の分析では、主観的な観点と定量的な指標を組み合わせて、自身の状況を詳細に把握することが重要です。以下に、現状分析にあたっての方法や注意点を示します。

主観的な観点での分析:
自分の感覚を言語化する:

  • 見た目の変化や体感について考える。
  • 日常生活で感じる体力の低下や動作の不便さを具体的に記述する。
  • 鏡で見た自分の体形や服の着心地など、外観に関する主観的な感想を挙げる。

定量的な指標での分析:
数値データの収集と評価:

  • BMI、体脂肪率、ウエストサイズ、筋肉量などの具体的な数値を収集する。
  • 定期健康診断の結果を基に、健康状態を客観的に把握する。
  • これらの数値を比較し、健康リスクや改善点を明確にする。

主観と客観の組み合わせ:
主観的な観点を客観的な指標に変換:

  • 体感や見た目の変化を、具体的な数値やデータに置き換える。
  • 例えば、「贅肉が目立つ」という主観的な感想を、ウエストサイズの測定結果と関連付ける。
  • 「日常生活で体力が低下している」という感覚を、筋肉量や体内年齢のデータと対比させる。

分析結果の整理:
箇条書きで整理する:

  • 主観的な現状と客観的な現状を箇条書きで整理する。
  • 主観的な観点と客観的な指標をそれぞれグループ分けして、分析結果を分かりやすくまとめる。

抽象的なテーマの取り扱い:
主観的な視点から始める:

  • 抽象的なテーマの場合は、まず主観的な観点から現状を挙げていく。
  • 主観的な視点を基にして、具体的な数値やデータに言語化するプロセスを踏む。
  • 主観的な現状を伝えることで、採点者にとっても理解しやすい分析結果を提供する。

注意点:
具体性の確保:

  • 主観的な観点を具体的な例や数値に結びつけることで、現状分析の具体性を高める。
  • 定量的な指標を使用する際は、信頼性の高いデータを基にすること。

一貫性の保持:

  • 主観的な感覚と客観的なデータが一致するように、一貫性を持たせる。
  • 複数の観点から現状を分析する際、一貫したフレームワークに基づいて整理する。


以上の方法や注意点を踏まえて、肥満症という具体的なテーマに対する現状(as is)を詳細に分析することで、健康的な体づくりに向けた具体的なステップを計画することができます。このプロセスの理解を通じて、技術士試験対策における「現状」分析のスキルを磨くことができるでしょう。

5. あるべき姿(To Be)の詳細検討

5.1 「夏のビーチにおける健康的な体」の定義

あるべき姿(to be)を明確にすることは、問題解決の第一歩です。技術士試験の問題文には、あるべき姿の一端が記載されていることが多いですが、それは抽象的な場合がほとんどです。受験者自身が自らの専門分野を踏まえて具体的なあるべき姿を定義することが求められます。この際、誰もが納得できる内容であることが重要です。

ここで、引き続き「夏のビーチにおける健康的な体」のあるべき姿を考えてみましょう。

時間軸の考慮
あるべき姿を考える際には、「どの時点で」という時間軸も重要です。この例では、夏のビーチに行く時点までに達成すべき目標とします。

健康的な体の具体的なイメージ
具体的なイメージを持つことで、目標が明確になります。例えば:

引き締まったウエスト:
 ウエストサイズが〇〇cm

適度に筋肉のついた肢体:
 筋肉量が△△kg
 体脂肪率が□□%

きれいな姿勢:
 ピンと伸びた背筋

小麦色に焼けた肌(人によってはこの観点もあり得ます):
 日焼け止めを使用しながら適度に焼けた肌

定量的な指標の提示
あるべき姿を定量的に示すことで、目標設定がより具体的になります。以下は、その一例です:

  • ウエストサイズ:〇〇cm
  • BMI:◎◎(健康的な範囲内)
  • 体脂肪率:□□%
  • 筋肉量:△△kg
  • 体内年齢:実年齢と一致もしくはそれ以下

具体的な目標設定の重要性
具体的な指標を持つことで、進捗を測定しやすくなり、目標達成に向けた計画が立てやすくなります。これは、技術士試験や技術者の日常業務においても同様で、問題文に示された抽象的なあるべき姿を具体的な目標に落とし込むことが、論理的で説得力のある解答論文作成につながります。

このように、「夏のビーチにおける健康的な体」のあるべき姿を具体的に定義することで、現状(as is)とのギャップを明確にし、問題と課題をより効果的に分析することが可能となります。このプロセスを通じて、技術士試験対策における問題解決スキルの向上を図ることができるでしょう。

5.2 具体的な目標設定とその理由

あるべき姿(to be)を考える際には、できるだけ具体的な姿を描くことが重要です。これにより、現状(as is)とあるべき姿(to be)の差分、すなわち「問題」を容易に導き出すことができます

具体的な目標設定を行うことで、現状と目標の差分が明確になり、差分を埋めるためにすべきこと、つまり「課題」と「解決策」を容易に見つけることができます。これは、技術士試験においても同様で、論理的で説得力のある解答論文を作成するために不可欠なプロセスです。

「夏のビーチにおける健康的な体」を目指す場合、以下のような具体的なあるべき姿(to be)の設定が考えられます:

引き締まったウエスト:
 目標ウエストサイズ:〇〇cm
適度に筋肉のついた肢体:
 目標筋肉量:△△kg
 目標体脂肪率:□□%
きれいな姿勢:
 ピンと矯正された背筋
小麦色の肌(人によってはこの観点もあり得ます):
 適度に焼けた肌

具体的な目標を設定する理由は、目標達成への道筋を明確にするためでもあります。具体的な数値目標があることで、自身の進捗を測定しやすくなり、モチベーションの維持にも繋がります。また、目標が明確になることで、達成するための具体的なアクションプランを立てやすくなります。例えば、現在のウエストサイズが〇〇cmで、目標が〇〇 − 5cmである場合、その差分を埋めるための具体的な行動が見えてきます(差分が10cmの場合は,具体的な行動は異なったものになるかもしれません)。

技術士試験においても、このプロセスは極めて有用です。問題文に示された抽象的なあるべき姿を具体的な目標に落とし込み、現状とのギャップを明確にすることで、論理的で説得力のある解答論文を作成することができます。これにより、出題者の意図に沿った解答を提供できるようになります。

このように、具体的な目標設定とその理由を明確にすることで、技術士試験対策においても効果的に問題解決スキルを向上させることができます。論文作成においても非常に重要な要素となります。

6. 現状とあるべき姿の差分(=問題)の特定

6.1 差分の具体例

  1. 差分の具体例

本説では,現状(as is)とあるべき姿(to be)の差分について,ウエストサイズを例に考えてみます。


現状(as is)とあるべき姿(to be)

  • 現状(as is): ウエストが〇〇cmであり、ベルトの上に贅肉が載っている状態である。
  • あるべき姿(to be): 引き締まったウエストで、そのサイズは〇〇 − 5cmである。

この差分を以下のように分析します。

差分の定性的な表現
現状のウエストサイズは大きく、ベルトの上に贅肉が目立つ。これに対して、あるべき姿としては、引き締まったウエストを目指すべきであり、その際に贅肉が目立たない状態が求められる。

差分の定量的な表現
現状のウエストサイズが〇〇cmであるのに対し、あるべき姿としてのウエストサイズは〇〇 − 5cmです。この差分は5cmとなります。

上記のように,定量的に分析できている場合、差分の特定は容易です。例えば、現状のウエストが90cmで、あるべき姿が85cmであれば、その差分は5cmです。このように具体的な数値を用いることで、問題の特定が明確になります。なお,定量的には,問題は「あるべき姿に対して現状のウエストが5cm大きい」と表記されます。一方で,定性的には,「ベルトの上の贅肉が目立っている」と表記できます。

定性的な表現を添えることで、採点者にとって理解しやすい論文となることがあります。例えば、「現状のウエストはベルトの上に贅肉が乗っており、見た目にも健康的ではない。一方、あるべき姿ではウエストが引き締まっており、見た目も健康的である」といった表現です。

同様にして、他の現状(as is)とあるべき姿(to be)のペアに対しても差分を特定すること,すなわち問題を見出すことが可能です。例えば:

現状(as is): 筋肉量が乏しく、運動不足で体力が低下している。
あるべき姿(to be): 適度に筋肉がつき、運動習慣が身についている。

この場合、筋肉量や運動習慣の差分を定量的に示すことで、具体的な課題を明確にできます。また、定性的な表現を添えることで、論文の説得力が増します。

現状(as is)とあるべき姿(to be)の差分を特定するプロセスは、技術士試験においても極めて重要です。このプロセスを通じて、論理的で説得力のある解答論文を作成するための基礎が築かれます。具体的な数値や表現を用いることで、出題者の意図を正確に捉えた解答を提供することが可能となります。このプロセスを丁寧に行うことで、問題の本質を見極め、効果的な解決策を導き出すことができます

6.2 差分から特定される「問題」のリスト

前節で挙げたウエストサイズ以外の現状(as is)とあるべき姿(to be)のペアに対して、問題を特定した例を列挙します。ここでは、問題を定性的に言語化します。

筋肉量に関するもの
現状(as is): 筋肉量が乏しく、運動不足で体力が低下している。
あるべき姿(to be): 適度に筋肉がつき、運動習慣が身についている。
問題: 筋肉量が少ないため、体力が低下しており、健康的な体を維持するのが難しい。また、運動習慣がないことで、体力の向上や筋肉量の増加が期待できない。

綺麗な姿勢に関するもの
現状(as is): 猫背姿勢で内気そうな性格に見える。
あるべき姿(to be) :綺麗な姿勢で、自分に自信があり社交的な性格に見える。
問題: 猫背の姿勢が原因で、見た目の印象が悪く、内気で自信がないように見える。この姿勢が社会的な交流や職場での評価にも悪影響を及ぼす可能性がある。

肌質に関するもの
現状(as is): 日焼けしておらず病弱そうに見える。毛深い。
あるべき姿(to be): 適度に日焼けしており、ムダな体毛がない。
問題: 肌が日焼けしていないため、病弱そうに見える。また、毛深さが見た目の印象を悪くしている。これらが原因で、健康的で活発なイメージが伝わらない。

以上のように、現状とあるべき姿の差分を定性的に言語化することで、具体的な「問題」を特定することができます。これにより、問題の本質を明確にし、次に行うべき「課題」を見つけるための基盤が整います。

技術士試験においても、同様のアプローチを取ることで、出題者の意図を的確に捉えた解答を作成することが可能となります。問題を具体的かつ定性的に特定することで、論理的で説得力のある論文を作成することができます。

このように、現状(as is)とあるべき姿(to be)の差分を具体的に特定し、それを問題として定性的・定量的に言語化することは、論文作成の重要なステップです。技術士試験対策においても、このスキルを磨くことが求められます。

7. 課題の設定と解決策の提案

7.1 課題の設定と解決策の提案の具体例

本節では、ウエストサイズに関して特定した問題に対して、課題と解決策を設定する例を示します。まず,特定した2つの問題:「あるべき姿に対して現状のウエストが5cm大きい」、「ベルトの上の贅肉が目立っている」に対し、現状(as is)とあるべき姿(to be)の差分を埋めるために具体的にすべきこと(=課題)を設定して言語化します。例えば,次のような課題が設定できます。

  • 夏までに現状のウエストサイズから5cm減らす。(定量的な課題の例)
  • 夏までにベルトの上の贅肉を無くする。(定性的な課題の例)

そして、具体的な解決策を提案します。例えば,次のようなものが考えられます。

  • 食事制限
  • ジムでの筋トレ
  • ランニング

これらの解決策は、実現可能なものであることが重要です。では、各解決策について詳細を見ていきます。

食事制限
詳細: 摂取カロリーを制限し、栄養バランスを整えた食事を心がける。具体的には、1日あたりのカロリー摂取を2000キロカロリー以下に抑える。
実現の難易度: 中程度。意志力と計画性が求められるが、習慣化すれば実行可能。
リスク: 極端な食事制限による栄養不足や体調不良のリスクがあるため、専門家のアドバイスを受けることが推奨される。

ジムでの筋トレ
詳細: 週に3回ジムに通い、筋力トレーニングを行う。具体的には、腹筋、背筋、大腿四頭筋などを重点的に鍛えるプログラムを実施する。
実現の難易度: 高い。継続的な通いが必要であり、時間の確保とモチベーション維持が課題となる。
リスク: 無理なトレーニングによる怪我のリスクがあるため、適切なフォームと適度な負荷を心がけることが重要。

ランニング
詳細: 週に3回、30分以上のランニングを行う。カロリー消費を促進し、全身の脂肪燃焼を図る。
実現の難易度: 中程度。天候や体調に左右されるが、習慣化すれば効果が期待できる。
リスク: 過度なランニングによる膝や足の負担が考えられるため、適切なシューズを選び、無理のないペースで行うことが重要。

複数の解決策を挙げたら、実現の難易度やリスクを考慮して、優先順位を設定することも重要なステップです。例えば、食事制限は比較的実行しやすく、効果が期待できるため、優先順位を高く設定します。一方、ジムでの筋トレは効果が大きいが、実現の難易度が高いため、次に優先します。ランニングは天候や体調に左右されやすいため、最後に設定します。

技術士試験では、解決策の提案において、自らの専門と実務経験を反映したものとすることが極めて重要です。これにより、論理的で説得力のある論文を作成することができます。また、根拠を示して優先順を示すことが求められるため、具体的なデータや実例を用いて説明することが望まれます。

特定した他の問題に対しても、同様にして課題を設定し,解決策を提案することが可能です。例えば、筋肉量の不足に対しては、適度な筋力トレーニングのプログラムを設定し、姿勢改善にはストレッチや姿勢矯正のためのエクササイズを取り入れることが考えられます。

以上のように、問題に対する具体的な課題を設定するプロセスを理解することで、技術士試験においても実務経験と専門知識を活かした、実現可能かつ効果的な解決策を提案することができるようになります

7.2 課題を解決するための具体的なアプローチ

本節では、技術士試験の必須科目Ⅰや選択科目Ⅲにおいて、解決策を考える上でのアプローチと注意点を述べます。問題の分析と課題の設定が正しく行えていれば、自らの専門分野の知見や実務経験を踏まえて、その解決策を提案することができます。

まず、実現可能で効果的な解決策を提案するためには、以下のアプローチが有効です。

専門分野の技術動向や研究開発動向をフォローする
実現不可能な、突飛な解決策を提案しないためにも、常に最新の技術動向や研究開発動向を把握しておくことが重要です。これにより、現実的で効果的な解決策を提案することができます。

キーワード学習を行う
試験対策として推奨される「キーワード学習」は、政策文書や白書、学協会誌の特集記事、国家プロジェクト等の成果報告書などを通じて行います。これらの資料は、最新の技術動向や研究開発の成果を学ぶための貴重な情報源となります。これにより、解決策の検討に必要な知識を深めることができます。

実現の難易度やリスクを検討する
解決策を提案する際には、その実現の難易度やリスクを十分に検討することが重要です。実務経験を活かして、解決策の実現可能性を評価し、リスクを最小限に抑えるための対策を考えることが求められます。このような検討を行うことで、説得力のある論文を作成することができます。

提案する解決策が、実現可能であり、効果的であることを示すために、具体的な根拠やデータを添えることが重要です。また、実現の難易度やリスクに関する検討を行うことで、採点者に対して説得力のある解決策を提示することができます。

技術士試験においては、課題の設定から解決策の提案まで、自らの専門と実務経験を反映させることが極めて重要であることを強調します。これにより、論理的で実現可能な解決策を提案することができ、説得力のある論文を作成することができます。

さらに、解決策を実施した後に共通して生じうる課題が問われる場合もあります。この際は、品質、納期、コスト、安全、環境、人的資源管理、情報管理の観点から考えることが有効です。これらの観点を考慮することで、解決策の実行後に発生する可能性のある問題点を予測し、事前に対策を講じることができます。このように、多角的な視点から解決策を検討することが、技術士試験での高得点を狙うために不可欠です。

8. まとめ

8.1 今回の例から学んだこと

これまでの本文で述べたことを踏まえて、身近でシンプルな「夏のビーチで輝く健康的な体づくり」という例を通して、問題の分析と課題の設定について学べる考え方やその重要性を総括します。

問題と課題の区別
今回の例では、「現状(As Is)」と「あるべき姿(To Be)」を考え,その差分を特定することから始めました。このプロセスを通じて、具体的な問題を明確にすることの重要性を学びました。技術士試験においても、問題文に示された抽象的なあるべき姿に対して、自らの専門分野や実務経験を踏まえて具体的な問題を特定することが求められます。

定量的かつ定性的な分析の重要性
問題の特定においては、定量的な指標と定性的な表現の両方が役立つことを学びました。例えば、ウエストサイズの具体的な数値を挙げることで問題を明確にし、定性的な表現を添えることで、問題の深刻さや重要性を伝えることができます。技術士試験でも、両者をバランスよく活用することで、採点者にとって理解しやすい論文を作成することができます。

具体的な課題の設定と実現可能性の検討
特定した問題に対して、実現可能な課題を設定することの重要性を学びました。例えば、食事制限やジムでの筋トレ、ランニングなど、具体的なアプローチを挙げ、それぞれの実現の難易度やリスクを検討しました。技術士試験では、現実的で実行可能な解決策を提案することが求められます。自らの専門知識や実務経験を反映させることで、説得力のある解決策を提示することができます。

多面的な視点の重要性
解決策を実施した後に生じうる課題について、品質、納期、コスト、安全、環境、人的資源管理、情報管理の観点から考えることが重要であることを学びました。これにより、解決策の実行後に発生する可能性のある問題を予測し、事前に対策を講じることができます。技術士試験では、このような多面的な視点から問題を検討し、包括的な解決策を提案することが高得点につながります。

キーワード学習の重要性
試験対策として、政策文書や白書、学協会誌の特集記事、国家プロジェクト等の成果報告書などから最新の技術動向や研究開発動向を学ぶことの重要性を再確認しました。これにより、現実的で効果的な解決策を提案するための知識を深めることができます。

今回の例を通じて学んだ考え方やその重要性を技術士試験に応用することで、論理的で説得力のある論文を作成する力を養うことができます。問題の特定、課題の設定、解決策の提案というプロセスを繰り返し練習することで、実務経験を反映させた現実的な解決策を提案する力を身につけましょう。

8.2 今後の対策へのアドバイス

試験対策を進める上での具体的なアドバイスを以下に述べます。

問題と課題の正確な導出
技術士試験において成功するためには、まず問題の正確な特定と課題の明確化が重要です。過去問練習に進む前に、問題と課題を正しく導出するスキルを身につけることが不可欠です。このスキルが欠如していると、論理的に整合性のない論文を提出してしまう可能性があります。自身の専門分野と実務経験を活かし、問題文から具体的な問題点を見出し、それに基づいて実現可能な課題を設定する練習を継続してください。

実務経験と知識の統合
解決策を提案する際には、自身の実務経験と最新の技術動向を統合することが重要です。政策文書や学術誌の情報を活用し、現実的で効果的な解決策を提示できるよう努めてください。これにより、採点者に対して信頼性の高い論文を提出することができます。

過去問練習の前に
過去問練習は重要ですが、それよりも先に問題解析と課題設定の基本を徹底することを強くお勧めします。試験時間内に解答論文を書き切る体力を、長時間を費やして獲得できたとしても、その解答論文の問題と課題が正しく対応していなければ、合格点をとることは不可能です。問題解決のプロセスを理解し、問題文から具体的な問題点を見出し、それに基づいて実現可能な課題を設定するスキルを高めることが、高得点につながるポイントです。

これらのアドバイスを実践することで、技術士試験の論文対策においてより自信を持ち、効果的な戦略を構築することができるでしょう。技術士試験の合格に向けて、着実に準備を進めてください。

9. おわりに

9.1 読者へのエンカレッジ!

技術士試験への準備を進める皆さんへのエンカレッジとして、以下の言葉をお届けします。

受験対策は、単なる試験対策にとどまりません。日々の業務においても、新たな知識やスキルの習得が直接的に役立ちます。試験勉強を通じて得た知見は、あなたの職場人生全体の成長に繋がる貴重な資産です。その意味で、努力は必ずしも試験合格のためだけのものではありません。それは、自己成長と専門知識の深化に向けた一歩であり、将来のキャリアにおける重要な投資でもあります。

日々の学習や練習を通じて、自分の能力を高める喜びを感じてください。困難に直面した時こそ、成長の機会が訪れています。どんな課題も乗り越えられる力を、あなたは持っています。自信を持って、進んでください。

そして、最後に忘れてはならないことがあります。成功は一日にして成らず、継続した努力と準備が重要です。一歩ずつ進んでいけば、必ず目標に向かって進む道が開けます。自分自身を信じて、前を向いて歩んでいきましょう。

皆さんの努力と決意を尊重し、最後まで応援しています。試験への準備を頑張ってください。成功を心から祈っています。

9.2 関連書籍の紹介

本ブログ記事の筆者が執筆したKindle書籍、「技術士第二次試験 必須科目I・選択科目IIIの対策法: as is to beフレームワークによる問題分析と課題設定」をご紹介します。この書籍は、技術士試験の必須科目Ⅰと選択科目Ⅲに特化した対策法を提案しています。as is to beフレームワークを活用し、問題と課題の明確化から解決策の策定までを具体的に解説しています。

興味のある方は、以下のリンクから詳細をご覧いただけます。

< https://www.amazon.co.jp/dp/B0D6FWBKQP >

技術士試験の合格に向けた有益な情報をお届けする本書が、皆さんの学習の一助となれば幸いです。

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